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西尾潤『愚か者の身分』感想レビュー。闇ビジネスの怖さと不気味さを感じる一冊

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お題「我が家の本棚」

西尾潤『愚か者の身分』感想レビュー

 

『マルチの子』を読んだことで西尾潤さんの他の作品が気になり、デビュー作である『愚か者の身分』も読んでみました。

 

 

『愚か者の身分』は、第二回大藪春彦新人賞受賞作の短篇(第一章の部分)に、その先の物語などを書き下ろし、長篇として出版された一冊です。

 

そこはかとない怖さと不気味さを感じながら、休み休み読み、3日くらいかけて読み終えました。

 

 

あらすじ

あらすじについては、Amazonより引用します。

身寄りなし。身分証なし。金なし。そんな優良人物をSNSを駆使して探し出すのがマモルの仕事だ。狙うは戸籍。女性を装い言葉巧みに相手の個人情報を引き出して、売買が成立すれば報酬をもらえる。ある日、マモルは上司から不可解な指示を受けた。タクヤと距離を置け。自分にこの仕事を紹介してくれた先輩に、
なにが起きたのか。翌日、タクヤの部屋の掃除を命じられたマモルが見たのは、おびただしい数の血痕だった。もう、タクヤはこの世にいない。悲しみにくれるマモルに一通のメールが届いた。それは、タクヤからのメッセージだったーー。

Amazon『愚か者の身分』Kindle版ページ より

 

グロ表現が苦手な方は避けた方が良い

表現がグロい部分があるため、グロ表現が苦手な方は、読むことを避けた方が良いと思われます。

 

漫画などである程度は慣れていると自分では思っていたのですが、読み進めていくなかで、目を背けたくなるような描写もあり…

 

途中で読むことがしんどくなり、読み終えるまでに中断と再開を繰り返しました。

登場人物に肩入れしづらい

章ごとに主人公が変わりつつ、話が進んでいきます。

そのため、視点も変わるし、時間も巻き戻ったりするので、そこに読みづらさを感じました。

 

登場人物に肩入れをして、感情移入して読んでいたとしても、次の章には、その人はまったく登場しないこともあります。

 

中断しながら読むのには良かったのですが、「この人がどうなったのか知りたい」の答えが出ないまま次に進み、最後まで分からないことも多く、モヤっとすることも多かったです。

現代社会の闇を感じた…

戸籍売買や、その他さまざまな闇ビジネスに関わる(関わってしまった)人たちの話です。

 

登場人物たちは法に背くことをしていますが、根っからの悪人ではなく、「元は普通だった」人たちです。

 

「運悪く関わってしまった」とも言えるし、「浅はかな考えから関わってしまった」とも言えると思います。

 

「運悪く」であろうと「浅はか」だろうと、すぐ側にそういう世界があり、簡単に関われてしまうということに、そこはかとない怖さと不気味さがあり…

 

「ふとしたきっかけで、誰でも闇ビジネスの世界に関わってしまう可能性がある」と思わせられる内容で、そこに現代社会の闇を感じました。

最後に小さな希望が見えて良かった

救いようのない展開が続いていたので、読むのが辛くなり、止めようかとも思ったほどです。

 

ただ、そう思ったときに読んでいた章(最終章)の内容がハラハラさせられるものだったので、止めるに止まれなくなり最後まで一気に読みました。

読むことを中断したら、続きを読むことに戻らなかったと思います。

 

ハラハラとした気持ちで読み続けていくなかで、「救いようのない状態で終わったらどうしよう?」と考えていたのですが、最後に少しの希望が見えて、ほっとしました。

 

最終章の主人公たちが、この先どうなるのかは非常に気になります。

 

『マルチの子』を読んだときにも感じましたが、西尾潤さんは、こういう「結末を読者の想像に任せる」ということが、とても上手いと思います。

 

すっきりとした気分で読み終わったわけではないのですが、暗いままで、どよーんとした終わりではなかったことに、私も少し救われた気分になりました。

文庫書き下ろしの章が個人的に嬉しかった

最終章の後に、文庫版に際して追加された書き下ろしの章があります。

私はKindle版で読んだのですが、そちらにも収録されていました。

 

この章は、『マルチの子』に続く内容です。

先に『マルチの子』を読んでいた私としては、その伏線に嬉しさを感じました。

 

話としては楽しい内容ではないのですが、こういうちょっとした繋がりを感じることができたのが、なんとなく嬉しかったのです。

 

『マルチの子』の感想↓

西尾潤『マルチの子』感想レビュー。マルチ商法の闇と強すぎる承認欲求の行き先… - 実験室~お気に入りに囲まれる生活を目指して~

 

ハマる人にはすごくハマる話

読み終えてみて、好き嫌いが、ぱっくり分かれる話だと思いました。

 

章ごとに視点(主人公)が変わるところも、淡々とドキュメンタリーを見ているかのように読むと、面白く感じる部分です。

 

時間軸が巻き戻るとこがある点も、頭のなかで整理して組み立てながら読書をしたい人にとっては、すごく面白いポイントなのではないでしょうか。

 

全体的に人間臭さがあり、触れたこともない世界の話なのに、妙なリアリティを感じました。

 

知らない世界を擬似体験することができる本なので、扱っているテーマとの兼ね合いで、ここも好き嫌いが分かれると思います。

 

 

第二回大藪春彦新人賞受賞作である第一章を読んでみて、合う合わないを考えてから、その先の章を読んでいくのもアリだと思います!

※私が読んだときは、Kindle Unlimitedの読み放題に含まれていました。

 

ではでは。

 

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