実験室~お気に入りに囲まれる生活を目指して~

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西尾潤『マルチの子』感想レビュー。マルチ商法の闇と強すぎる承認欲求の行き先…

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お題「我が家の本棚」

西尾潤『マルチの子』感想レビュー

この記事は、2023年10月27日に更新しました

 

著書である西尾潤さんが、実体験をもとに「マルチ商法」の深淵を描き切った震慄のサスペンス『マルチの子』を読みました。

 

西尾潤 (著) - 2021/6/9
※2023/9/8 文庫版も発刊されました

 

帯には「承認欲求地獄へようこそ」と書かれているのですが、承認欲求だけが原因だったのでしょうか?

その辺りについても考えてみました。

 

あらすじ

あらすじについては、Amazonより引用します。

 

賢い姉、愛らしい妹に比べて自分には何もない。
夢を持てず、鹿水真瑠子は毎日をなんとなく過ごしていた。

そんなある日、バイト先の掲示板で不思議な貼り紙を目にする。

「磁力と健康セミナー・無料開催」

それは地獄への扉だった――。

認めてほしい。
ただその一心で始めただけなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。

Amazon『マルチの子』Kindle版 ページより

読もうと思ったきっかけ

この本を知り、読んでみたいと思ったきっかけは、西尾潤さんが本書を出版するにあたり受けたインタビューの記事を読んだことです。

「20歳で月収150万越えも…」 最年少ゴールドランク保持のマルチ“成功者”が借金700万に転落した“末路” | 文春オンライン

 

なんとなくマルチ商法について調べていたときに出版インタビューを読み、「これは…!」と思い検索。

Kindle Unlimitedの読み放題に含まれていたため、迷わずにダウンロードし、その日のうちに、読み終えました。

※Kindle Unlimited対象になっていたのは2022年12月です。タイミングによっては対象から外れている可能性があります。

 

ちなみに、この1年くらい前にも同じインタビュー記事を読んでいたのですが、その時は「本を読もう」まで気持ちがいきませんでした。読書もタイミングですね。

マルチ商法とは?

マルチ商法は、マルチレベル・マーケティング、MLM、ネットワークビジネス、連鎖販売取引などとも呼ばれています。

 

マルチ商法は、「特定商取引法」で「連鎖販売取引」として規制されている販売形態です。 ネットワークビジネス、システム販売などとも呼ばれ、商品を買って販売組織に参加した会員が、同じように友人・知人を組織に加入させ、新たに会員になった人がさらに新しい会員を加入させ組織を拡大していく商法です。

東京くらしWEB より

 

ビジネスの仕組みとしてはねずみ講(無限連鎖講)と同じではあるものの、マルチ商法(連鎖販売取引)自体は、違法ではありません。

 

扱っている商品は良いものだったりするので、人におすすめしたい心理が働くのでしょう。

 

私はアロマオイルの紹介として、ドテラを勧められたことがあります。

いくつかサンプルを使わせてもらい、とくにオレンジのオイルは使い続けたいくらい気に入ったので、「買うだけ会員(ビジネスはやらない)」になりました。

アロマオイルとしては良い商品だと思うので、人に勧めたくなる気持ちはわかります。

 

私の場合は最初から「商品が買いたいだけ(ビジネスはやる気ない)」と話をしていたので、軽い勧誘しか受けなかったのですが、なかには強引に勧誘をするかたもいるようで…

 

勧誘仕方によっては違法となるし、トラブルが多いことから、人間関係が壊れることもあります。

 

ちなみに主人公の真瑠子は、「マルチ」と言われるのが嫌で、「M」とか「ネットワークビジネス」といった言葉を好んで使っていました。

二つの意味でぞっとした

私はこの本を読み、二つの意味でぞっとしました。

マルチ商法の勧誘は身近にある

先ほど、ドテラ(アロマオイル)の件を書きましたが、それ以外にも「あれは勧誘への入り口だったな」と言えるような出来事がいくつかあったことを、読みながら思い出しました。

 

人間関係の狭い私ですら、何回か勧誘の入り口に出くわしたことがあるということは、それだけ「やっている人口」が多いのではないかと思いました。

転がり落ちる可能性は誰にでもある

ネタバレになるので詳細は伏せますが、主人公は次から次へとやってくる話から抜け出せなくなっていきます。

 

抜け出せなくなった理由は、借金を重ねたとにより視野が狭くなっいたことも、大きいと思います。

 

「貧すれば鈍する」という言葉があるように、お金に困っている状態だと、物事の判断が鈍ることがありますよね…

真瑠子(主人公)は、まさにこの状態で、転がり落ちていきます。

 

小説なので少しオーバー気味に書かれているとはいえ、誰でも同じように転がり落ちる可能性はあり、それを目の当たりにした気持ちになりました。

強すぎる承認欲求だけが原因だったか?

帯には「承認欲求地獄へようこそ」と書かれています。

 

確かに、承認欲求の地獄にズブズブはまっていったのですが、それ以外のものも絡み合っていたと思います。

承認欲求の強い人とそれを満たすことが上手い人

主人公の真瑠子は、仲間たちから褒められることにより、承認欲求が満たされ、その快感からマルチ商法によりはまっていきました。

 

承認欲求とは、「他者から認められることにより、自分を価値ある存在として認めたい」という願望のことです。

 

真瑠子の周りにいたマルチ仲間は、真瑠子の承認欲求を満たすことが上手い!

「これを言われたら気持ち良くなるよね」と思えるような言葉を、要所要所で真瑠子に伝えるのです。

 

元々、承認欲求が強いタイプの人間ならコロっといくでしょうし、そこまでてなくても気持ち良くなるでしょうね。

 

かなり初期から、周りにいる「承認欲求を満たしてくれる人」に、ハマりきっていたと思われます。

 

ちなみに、私を「勧誘の入り口」へ誘った人には、同じように承認欲求を満たすような言葉をたくさん使う方がいました。

マルチ商法でやっていくためには、そういう才能も必要なのかもしれません。

自己肯定感が低いところを狙われた

真瑠子の承認欲求が強くなった理由のひとつとして、「自己肯定感が低い」ということがあったと思います。

 

真瑠子は3人姉妹の真ん中。

姉はなんでもできるタイプ(とくに勉強ができる)。

妹は、自分の活かし方を早くに知り、自分軸で生きているタイプ。

その間にいる、自分がよく分からず得意も見つからない真瑠子。

 

姉と妹と自分で、知らないうちに比べてしまっていたのかもしれないですね。

 

比べているうちに「自分には何もない」と思い、自分のことが肯定できなくなり、自己肯定感が低くなっていったのではないでしょうか?

 

周りの人(マルチ仲間)に褒められることにより、自分は価値のある人間だと思えるようになり、自信もつき、自己肯定感も高まっていったのかもしれない。

 

「全能感すら感じているのではないか」と思えるシーンがあるくらいに、自己肯定感は高くなったのだろうけど…

結末を考えると、それが良かったのかは分からないです。

他人軸なところを狙われた

「他者から承認されることで自分を満たすことができる」ということは、軸を相手(他人)に委ねている状態です。

ようは、「他人軸」の状態。

 

全体を通して「自分で考えて行動している」というより「他人に流されて行動している」という節が、真瑠子にはありました。

 

順応性が高いというより、「考えずに行動している」ように見えました。

 

ここも、転がり落ちる過程に出てくる人々に狙われたポイントだったと思います。

 

真瑠子の他人軸は最後まで変わらず、ラストの部分(結構、衝撃的だった)でも、やはり流されそうになっていました。

 

この本の結末には、その後の真瑠子がどうなるのか明確に書かれておらず、読者の想像に任されています。

 

願わくば、人生の手綱は自分で握り、誰かの評価に左右されない人生を歩んでいってもらいたいと思うけど…どうなのでしょうね。

「誰かに承認される快感」を知ってしまったから…

 

西尾潤 (著) - 2021/6/9
※2023/9/8 文庫版も発刊されました

 

この本を読み、「軸を自分に置き、自分で考え行動することが、自分を守ることに繋がる」ということを改めて感じました。

 

承認欲求が強すぎる、自己肯定感が低い、他人軸に偏っている、これらがマイナスな方向に働いた場合をリアルに描かれており、反面教師的に見ることのできる一冊でした。

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この本は、Kindle Unlimitedに会員登録している方なら、無料で読むことができます。

 

Kindle Unlimitedに登録している方はもちろん、Kindle版の電子書籍を読むなら、Kindle Paperwhiteがおすすめ。

 

その昔は、紙の漫画があふれ、置き場に困るような状態でしたが、Kindle Paperwhiteを使うようになってからは、漫画や本の置き場を考えずに過ごせるようになりました。

 

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Kindle Paperwhiteを使い始めたばかりの頃の記事(いまは2代目使用中)↓

Kindle Paperwhiteを購入して変わったこと - 実験室~お気に入りに囲まれる生活を目指して~

 

また、Kindle Paperwhiteひとつあれば、何冊もの本を一気に持ち歩くことができます。

辛かった3週間の入院生活を支えてくれたのは、Kindle Paperwhiteにダウンロードしてあった漫画たちでした。

 

入院していたときのお話(漫画を読むことができるようになってきた頃)↓

【ピルの副作用で脳出血6】治療は進みつつも、相変わらずの頭痛。不安との闘いもスタート。 - 実験室~お気に入りに囲まれる生活を目指して~

 

ではでは。

 

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